進取の精神が生み出す京都らしさを体現

荒川株式会社代表取締役社長 荒川 慶一

進取の精神が生み出す京都らしさを体現

 1886(明治19)年に創業して以来、「さんび」ブランドを中心とする半衿などの和装小物事業を続けてきた荒川株式会社。130年以上にわたって受け継ぐ技と品質を生かしたオリジナルブランドのほか、国内外の有名ブランドやデザイナーとの提携など、多様なブランド展開を続けてきました。現在も、がま口や手拭いといった日常使いできる雑貨を通して、「和」の楽しみを提供するさんび堂。歴史と実績に甘んじることなく、進化を続ける代表取締役社長の荒川慶一さんにお話をうかがいました。

観光地の中心で“ほんまもん”志向の店づくりを

 太秦出身ということもあって、嵐山には昔から親近感があったんです。ただ、私は中学・高校時代を東京で過ごしているので、どこか京都を外から見ているような感覚があって。昇龍苑への出店のお話をいただいた時、外からの視点で、改めて「京都らしさってどういうことだろう」を考えました。それは、古いものをきちんと評価しながらも、新しいものから逃げない。積極的に取り入れようという進取の精神が生み出すものだろうと思っています。
 弊社では、烏丸本店を中心に和装小物を展開してきましたが、お客様はやはり着物に馴染みがある方がほとんど。着物に馴染みの薄い方、幅広い年齢層のお客様とも新たにご縁を結びたいという思いがありました。嵐山という観光地の中心部という好立地にありながら、一般的なお土産物店とは一線を画した“ほんまもん”志向の店をつくれるとあって、そのコンセプトに賛同したんです。

老舗らしい落ち着きとカジュアルさが共存

 嵐山昇龍苑の建物は、和風建築を基調にしながら、モダンさや品も兼ね備えていますよね。お客様にも「さすが京都の名店が一堂に会した施設」と感じていただけるのではないでしょうか。さんび堂嵐山店のデザインは、烏丸本店も手がけていただいた辻村久信先生にお願いしています。「伝統を守り続けるだけでなく、進化を続ける老舗」を表現していただきました。老舗らしいゆったりと落ち着いた雰囲気は維持しながら、本店よりもカジュアルでオープンな店構えに仕上げています。内装の随所に竹を使用し、竹林を表現したデザインは嵐山店の特徴ですね。

ロンドン生まれのリバティプリントががま口に

 幅広い年代の方に人気なのが、サイズも形もさまざまながま口。企画と検討を重ねて作り上げています。特に、1875年にロンドンで生まれたリバティ社製の生地を使ったリバティ柄がま口は一番人気。アールヌーボー様式の小花柄に代表される、かわいらしく優雅なテキスタイルがポイントです。一方で、立体感のある凹凸で紋様を織り出した「ふくれ織り」シリーズでは、麻の葉柄や利休梅柄などの伝統的な紋様もご好評いただいています。
 そのほか、エコの観点から注目されるアイテムの一つが風呂敷。包み方や結び方次第で、お弁当箱やワインボトル、ショッピングバッグとしてもお使いいただけます。

「小銭入れ・丸型3.3寸」税込1190円、「リバティプリントの風呂敷(92cm幅)」税込2970円

身近なアイテムを通して、「和」を楽しんで

 伝統的な和装小物とモダンなテキスタイルを組み合わせたり、和柄をポップなカラーバリエーションで展開したり、身近なアイテムに「和」の要素を取り入れながら、楽しんでいただきたいと考えています。まだまだご紹介したいアイテムはたくさんありますので、京都屈指の観光地・嵐山を訪れた思い出の一つとして、ぜひご来店いただき、お手にとってみてください。

「リング付ポーチ・5.5寸」税込2640円

亀岡から嵐山まで、保津川を下るラフティングのツアーに家族で参加した時のこと。コースの最後に訪れた京都 嵐山温泉「風風の湯(ふふのゆ)」がとても印象的でした。思いのほか寒い日で、観光客でいっぱいの嵐山を、ウェットスーツ姿でガタガタと震えながら歩いて行き、温泉であたたまったことは楽しい思い出です。

※画像はイメージです。