老舗がチャレンジ! 昇龍苑で新たな体験を

株式会社 石田老舗代表取締役社長 石田 宏次

老舗がチャレンジ! 昇龍苑で新たな体験を

 丸くかわいらしいフォルムのたい焼きがSNS上で話題を呼ぶ、まめものとたい焼き。手がけるのは、明治4(1871)年創業の石田老舗です。明治時代後期には宮内庁や宮家に納めるぼうろを受注生産するようになり、現在もその技術を生かしてフィナンシェやクッキーなどの焼き菓子を作り続けています。そんな石田老舗が仕掛けたのが、見た目・味ともに従来のイメージを塗り替えた“ネオたい焼き”。自由な発想と大胆かつ緻密な戦略で、新たな名物を生み出した、代表取締役の石田宏次さんにお話をうかがいました。

焼き菓子業界150余年の技術を生かしたたい焼き

 出店にあたっては、「嵐山を打ち出せるような、新しいスイーツを作ってほしい」と依頼されていました。そこで以前、たい焼きの屋台に外国人観光客の皆さんが行列していたことを思い至ったんです。150年以上焼き菓子業界で商いをしてきましたから、“焼き”の技術には自信をもっています。そこで、「生地は薄く餡をたっぷり」という従来のたい焼きではなく、生地そのものおいしさを味わっていただけるよう厚めに焼き上げ、表面はサクッと中はふわっと柔らかい食感を目指して開発を始めました。 素材は、京都のものを中心に選りすぐり、その良さを生かして餡・生地それぞれのおいしさをシンプルに感じていただけるものにしたい。そんな思いで、半年以上の開発期間を経て誕生したのが、まめものとたい焼きです。

独自のエンタメ性とライブ感がSNSで評判に

 開発段階で重視していたのがエンタメ性。おいしいのはもはや当たり前、そこに「驚き」や「楽しさ」をプラスしたいと考えていたんです。特にこだわったのはフォルムですね。鯛そのものの形ではなく、表裏に店名にちなんだ「ま」と「め」の文字を入れた丸くかわいらしい、SNS映えするフォルムに仕上げました。他にはない、見た目にもキャッチーでインパクトがあるものが完成したと思っています。 驚きと楽しさを演出する上でこだわったのは、ライブ感です。特にそれを感じていただけるのが、一番人気の「あんバター」。当店のたい焼きは作り置きをしていません。ご注文いただいてから生地を焼き、ほかほかのたい焼きに板状にカットしたバターを挟む。この一連のプロセスを目の前で見ていただくことで、ワクワク感が高まりますよね。バターの量も、たい焼きの温度で程よく溶ける絶妙なサイズを追求。店頭に掲げている「賞味期限1分!」の理由はここなんです。

「つぶあん」「ロイヤルカスタード」税込320円、「あんバター」370円、 「コーヒー(ホット/アイス)」税込400円、「たい焼きとコーヒーのセット」税込550円

若い世代の新たなスタンダードをつくりたい

 こうした、さまざまな仕掛けが実を結んでいると感じています。若い世代のお客様が思い思いの画像をSNS上で発信されることで、自然と拡散した結果ですね。 私自身は、昔ながらのたい焼きに親しんできた世代ですが、我々の子どもの世代に当たる10〜20代のお客様=“ネオたい焼き”世代にとって響くものを作り続け、新たなスタンダードにすることが目標です。

ここでしか味わえないおいしさ+αを追求

 嵐山昇龍苑は、「老舗はたのし」というコンセプトに賛同した企業が集まり、訪れるお客様に「新しい体験をしていただける場所にしよう」とチャレンジしています。いわば、老舗にとっての“ラボ”。ここでしか体験できないこと、味わえないものを楽しんでいただきたいですね。 最近は、当店にピンポイントでお越しくださるお客様も増えています。また、この度おかげさまで、清水店が4月25日から新しくオープンとなります。飽きずにリピートしていただけるよう、季節限定メニューなども考案中。これからも驚きや楽しさを追求し、進化し続けますのでご期待ください。

鉄板かもしれませんが、やはり渡月橋から桂川、嵐山の山並みを眺めるのが好きです。それから、観光ルートとは逆に、トロッコ嵐山駅から竹林を横目に天龍寺へ向かうのも風情があっておすすめですよ。